――人生も競馬も、走り出さないと始まらない。
出版社:新潮社

妄想書店より
この本は“夢と現実の棚”に置きたい。 勝つことよりも、“続けることの重さ”を描いた物語で、 読み終えたとき、競馬の見え方も人生の見え方も変わってしまう一冊。
読んだきっかけ
ドラマ化されて話題になり、原作が早見和真さんだと知って興味が湧いた。 『アルプス席の母』や『ひゃくはち』のように、 人間の泥臭さと静かな情熱の描写が上手でクセになる。 さらに競馬好きの自分には“避けて通れない作品”だと思い、読み放題で挑戦。
どこに何を感じたか?
すんなり“勝たせてくれない”。 競馬小説なのに、読者をスカッとさせる勝利がほとんど来ない。 そのもどかしさや悔しさが、逆にリアルだった。 現実の競馬も、勝つ馬より負ける馬の方が圧倒的に多い。 馬主もスタッフも全員が勝ちたいのに、 努力や才能ではね返される世界。 その“負け続ける苦しさ”をここまで丁寧に書く小説は珍しい。 でも、その分ラストの戦績が胸に刺さる。 ずっと勝てなかった馬が、最後に確かに“何か”を残す。 読者のこちら側も一緒に走ってきたようで、あの終わり方には自然とニヤニヤした。 そして気づいたこと。 競馬の血統の話と、親子の関係性の描き方が構造としてとても似ている。 “何を継ぎ、何を超えるのか”。 人間も馬も、その一本の線でつながっていた。
どんな本だった?誰かに伝えるなら
競馬の面白さと、人生の面白さを同時に教えてくれる物語。 欲望・夢・嫉妬・継承。 人によって誰に共感するかが分かれる“多層の物語”で、 同じ本なのに全員ちがう読み方ができる。 そして、人生も競馬も、 “まず走らないと、何も始まらない”。 そんな当たり前で、でも忘れがちな真実を思い出させてくれる。
自分に何をもたらしてくれた?
今まで競馬は「勝つかどうか」だけで見ていた。 でもこの本を読んでから、勝ち負け以外の景色が見えるようになった。 馬主が背負う重圧、スタッフの願い、 “まず無事に走り終えてほしい”という気持ち。 G1に出ているだけで、どれだけすごいのか。 続けているだけで、どれだけ尊いのか。 その重さに思い至ったことで、レースの見え方が変わった。 競馬が、ただのギャンブルじゃなく、 “人生の縮図”に見えてくる。 そんな視点をくれた小説だった。
こんな人におすすめ
競馬が好きな人、 夢と現実の間で揺れている人、 「続ける意味」を探している人。
妄想書店コメント
勝つよりも、続ける方がずっと難しい。 でも、続けた先にしか見えない景色がある。
次に読むなら
- 『アルプス席の母』早見和真──親目線で甲子園を見てみたい
- 『フェスタ』馳星周──私が次に読みたい競馬関連の本
- 『優駿』宮本輝──競馬文学の金字塔


