王道を外れても、挑戦は終わらない。『不登校からメジャーへ』読書感想

――どんな状況でも、やりようはあると教えてくれる生き方。

著者:喜瀬 雅則
出版社:光文社新書

妄想書店より

この本は “生き直しの棚” に置きたい。 才能があっても道を外れてしまう人はいる。でも、そこで終わりじゃない。 むしろ「外れたから見える世界」がある。 根鈴雄次の人生は、そんな“もう一度立ち上がる物語”だった。

読んだきっかけ

タイトルの強さに惹かれた。 不登校・引きこもり・中退・渡米——それでも挑戦をやめなかった人間がいる。 そんな事実を知った瞬間、この本に触れずにはいられなかった。

どこに何を感じたか?

まず思ったのは「こんなチャレンジをしていた人がいたなんて知らなかった」という驚き。
当時はイチロー選手や新庄選手が注目されていて、 その裏で同じようにメジャーの扉を叩いていた人の存在を知らず、 「知っていたら応援していたのに」と、読んでいて悔しくなるほどだった。

根鈴さんのぶれない生き方が、とにかくかっこいい。 王道ルートを外れた瞬間から、 “野球を続けて上を目指すことのしんどさ”が一気に現実味を帯びる。 日本でもアメリカでも、『 経歴・肩書き・カテゴリー 』など、こういう“証明書”がないと上のステージには行けない。 その壁に何度も阻まれながら、それでも挑戦し続けた強さに痺れた。

そしてもうひとつ胸に残ったのは、 「手を差し伸べてくれる人は必ずいる」という事実。天からポトっと落ちてくるような、偶然の縁。 その一瞬を掴めるかどうかが人生を分ける。 プライドを捨てて頭を下げる強さ。 夢のために、自分の感情を脇に置く覚悟。 それができる人間こそ、本当に“挑戦する人”なんだと感じた。

どんな本だった?誰かに伝えるなら

ただの逆境物語ではない。 日本とアメリカの野球文化の違い、 プロとアマの境界、 制度の歪み、 選手が背負わされる見えないルール。 そういう“社会の構造”が、根鈴さんの人生と絡み合って描かれている。 挑戦とは本人の努力だけではどうにもならない現実もある。 でも、諦める理由にはならない。人生は一度外れても、また走り出せる。その強さを静かに教えてくれる本。

自分に何をもたらしてくれた?

読んでから、世界の見え方が少し変わった。 挑戦するには“道の正しさ”より“諦めないしぶとさ”が必要だと思えた。 そして、 「自分も誰かの支えになれる人でありたい」 そんな思いが自然と湧いてきた。 根鈴さんの道場での活動が象徴しているように、 挑戦した人は、次の挑戦者の背中を押せる。 自分もいつかそういう生き方がしたい。 そう思わせてくれる本だった。

こんな人におすすめ

挑戦の途中で“何者でもない自分”に落ち込んだことがある人。
王道から外れた人。 それでも前に進みたい人。

妄想書店コメント

肩書きがなくても、道は続いていく。 挑戦とは、自分を証明する行為である。

次に読むなら

  • 『トライアウト』藤岡陽子──野球と通じて人生を見つめなおす物語
  • 『補欠のミカタ レギュラーになれなかった甲子園監督の言葉』──レギュラーじゃなかった選手たちのその後の物語
  • 『八月の御所グラウンド』──球場で起こった不思議な奇跡。直木賞受賞作。⇒シュンサンの感想