著者:三宅香帆
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン

妄想書店より
この本は、妄想書店の「ことばの棚」に置きたい。
語彙を増やすための本ではなく、言葉にしようとする姿勢そのものを肯定してくれる本だからだ。
うまく話せない人ほど、安心して手に取ってほしい一冊だと思う。
読んだきっかけ
タイトルに惹かれた。
自分は文章を書いて発信もしているし、考えたことや感じたことを「自分の言葉で伝えたい」と思っている。それなのに、実際には「好き」「すごい」「やばい」で終わってしまうことが多い。
その違和感を、一度ちゃんと掘ってみたかった。
どこに何を感じたか?
読み始めてすぐ、ほっとした。
「やばいしか出ない」のは今の問題ではなく、昔の人も「あはれなり」で感情を表現していた、という話を読んだときだ。正直、それまで自分は、語彙力がないのか、思考力が落ちているのか、どこか劣っているのではないかと感じていた。
でもそれが、人として自然な反応でもあると知った瞬間、この本を「ちゃんと読みたい」と思えた。
同時に強く残ったのが、クリシェの話。
人は他人の言葉に影響されやすく、気づけば聞いたことのある表現で、自分の感情を処理してしまう。
それは楽だけれど、そこに自分はいない。
だから大事なのは、「それのどこがよかったのか」「自分は何に反応したのか」を一段だけ掘ること。
この本は、その姿勢を内容だけでなく、書き方そのもので示していると感じた。
どんな本だった?誰かに伝えるなら
「言語化が上手くなる本」ではなく、「言語化してみようと思える本」。
推しのステージを例に、表情なのか、演技なのか、衣装なのか、空気感なのか。
“どこに反応したか”を言葉にするだけでいいと教えてくれる。
だから読んでいて、「自分にもできる」と思えた。
自分に何をもたらしてくれた?
この本を読んで、作者自身も書評家として、「推しの良さを伝えたい」という気持ちを起点に、自分がどう感じたかをずっと言語化し続けてきた人だからこそ、これだけ伝わる文章が書けるのだと腑に落ちた。だから、技術的なことよりもまずやることはひとつだと思った。
自分の中に生まれた感情を、取りこぼさずにすくい取ること。
それを純度高く言語化すること。
それをコツコツ続けていく。
それ自体を面白がる。
他の人がやっているかどうかは分からないけれど、それが自分らしさやユニークさになったら面白い。
だから今も、noteをほぼ毎日、そういう気持ちで更新している。
この本は、「どう書くか」ではなく、「どう向き合い続けるか」を教えてくれた。
こんな人におすすめ
言語化が苦手だと思っている人。
発信したいけれど、言葉が借り物っぽく感じている人。
妄想書店コメント
言葉は磨くものじゃない。
感じたところに立ち戻れば、ちゃんと拾える。